「ディーリアスとゴーギャン」NEWS
プロジェクト協賛: ディーリアス基金、コートールド美術館
イギリスの作曲家、フレデリック・ディーリアスは、1888年にパリへ移住し、以来様々なアーティスト達と交流を重ねた。ロンドンのコートールド美術館に飾られているゴーギャンの「ネバーモア」の最初の所有者であったディーリアスは、1898年にこの作品をゴーギャンから購入した。この絵はディーリアスの宝物であり、彼が作曲した書斎の壁に飾られた。
ディーリアスとゴーギャンは1894年に出会った。
出会いの場は、1894―95年にゴーギャンが住んでいた、アマチュアの作曲家・ウィリアム・モラードの家であった。ディーリアスのアーティスト達との交流の輪はここから広がり、以来ムンク、ロダン、ミュシャや、文学ではイプセンやハムスンなどに出会った。
ディーリアスは、ゴーギャンに出会った1894年以降、作曲法が変化していく。
1884年にアメリカに移住したころに聴いた黒人労働歌や1886年にライプツィッヒで出会ったグリーグからの影響を基に、ハーモニーはさらに複雑になり、曲の構成もドイツ式のロマン派から離れ、「意識の流れ」が本流となる。それは、構成にとらわれず、感情の変化や雰囲気の流れを表現しようというものである。
当時ベートーベンを芸術家として尊敬していたゴーギャンはある手紙に「盲目と難聴、[ベートーベンは]全てから孤立させられ、作品が彼だけの世界を醸し出した」と書き、絵を描くときは作品のモデルを視界から隠し、想像の中で描いたと言う。ディーリアスが人生の後期に盲目になっても作曲活動を続けていたことは、ゴーギャンの創作姿勢を反映しているようで、運命的なものを感じさせる。
ディーリアスの4曲のヴァイオリン・ソナタの内、最初のソナタ(1892年)と最後のソナタ(1930年)を比べると作曲法が大いに発展している。最後のソナタを書くころには、梅毒により体の麻痺と盲目に苦しみ、体が不自由になったため、イギリスの作曲家・エリック・フェンビーに音楽を楽譜に書き取らせた。一方ハーモニーの色彩はより自由になり、織り成すハーモニーは「ネバーモア」の色彩と共に、ミステリアスな雰囲気とノスタルジックな感情を訴えかけてくる様だ。
「ディーリアスとゴーギャン」コンサート・シリーズ
ディーリアスとゴーギャンから広がった交流の輪を基に、
2012年秋、
ロンドン、ケンブリッジと東京にてコンサート・シリーズを開催しました。
プログラム
ディーリアス:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ(遺作)
ドビュッシー:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
グリーグ(ソーレー編):「ソルヴェイグの歌」、「君を愛す」
ラヴェル:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
ディーリアス」ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第3番
小町碧(ヴァイオリン)、サイモン・キャラハン(ピアノ)
協賛: ディーリアス基金、コートールド美術館
2012年9月14日
ロンドン・英国王立音楽院・レクチャーリサイタル
「ディーリアスとパリのアーティスト達」
2012年9月19日
ロンドン・St.James’ Picadillyランチタイム・リサイタル
2012年9月21日
ロンドン・Princess Alexandra Hall
「Delius and Gauguin – A Conversation」
コートールド美術館の協賛により、チケットを購入された先着30名様に美術館への招待券をプレゼント!
2012年10月14日
ケンブリッジ・フィッツウィリアム美術館 レクチャー・リサイタル
「Delius and Gauguin – A Conversation」
2012年11月9日
東京私的演奏協会 第99回演奏会
渋谷区文化センター大和田 大練習室
「ディーリアスとゴーギャン、同時代の作曲家達」
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